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瞑想オカン

ヴィパッサナー瞑想修行に勤しむ四十路オカンの日記

異常感覚とヴィパッサナー

これはわかる人にしか分からないのではないかと思うのだが、私には幼い頃から、「体の感覚が左右均等に起こらないと落ち着かない」という奇妙な性癖があった。

右手で触ったものには左手でも触れたくなるし、右足で踏んだものは左足でも踏まないと気が済まない。ものを食べる時、左側で噛んだら右でも噛まなければ落ち着かないし、右目で見たものは左目でも見たくなってしまう。

それによって生活に支障が出るほどではなかったため放置したまま大人になったが、お医者にかかれば一種の神経症という診断が出るのかもしれない。

この感覚は今でもなくなっていないが、成長とともにうまくやり過ごす術を身につけたので、今は私にそんな癖があることを知らない人も多いと思う。ただ、疲れが溜まったりストレスフルな環境下で何日も過ごしたりすると、湧き上がる衝動を抑えるのが難しくなる傾向は割と最近まであった。

意識してこの衝動を止められるようになったのは、ヴィパッサナーに取り組むようになってからだと思う。
衝動自体はなくなっていないが、それが生まれてくる様子を他人事のように観察し、「左右対称に触りたいと思っている『私』というのも、所詮は脳が生み出す幻のようなものなのだ」と考えられるようになったことで、その衝動に対する執着が薄れたのかもしれない。

それは今でもしばしば起こるけれど、
「ああ、触りたがってるなぁ。でも、別に触らなくても平気だから…」
と「自分」の中の衝動担当者を宥めるような気持ちでそれを眺めている。

※※※

面白いのは、何年か前に三男が、深刻な顔でこれと同じ症状を持っていると打ち明けてきたことだ。へぇー、こういうのも遺伝するんだなと感心し、
「それお母さんも一緒、一緒♪」
と二人で盛り上がって、以来、彼と私はそういう異常感覚の心強い共感者となった。

本屋で本棚の左側から一冊だけ飛び出している本を見ると、
「これはあかんよね〜」
「あー、分かる分かる。両方飛び出すか両方引っ込めるかしないとね〜」
などと言いながらさりげなく本を並べ直し、横断歩道を渡るときには、
「最後の線は両足で均等に踏みたいよね〜」
「あー、それめっちゃ分かるわー」
と、最後のラインの上で並んで足踏みをしたりする。


三男は瞑想にも割と関心を示し、寝る前などにちょっと試してみたりしているそうなので、いずれはこの異常感覚を制御できるようになるだろう。
私は一足お先にそこを卒業しつつあるが、後から来る彼が一人孤独に悩むことのないよう、その日が来るまでさりげなく寄り添っていけたらよいと思っている。