瞑想オカン

ヴィパッサナー瞑想修行に勤しむ四十路オカンの日記

妄想を止める

何年も前に読んだ「一秒」禅という本に、「思うて詮無きことは思わず」という言葉が紹介されていた。
「考えても仕方のないことは考えない方が良い」という意味で、「なるほど、確かにそうだな」と感銘を受けたが、その一方で「そうは言っても、その『考えない』ことが難しいのではないか…」とも思っていた。

私は元来四六時中何かしらゴチャゴチャと考え続けているタイプで、当時はその思考の流れを自分で制御することができなかった。
この激流のような思考が止まればどれだけ楽だろうかと憧れにも似た気持ちで思いながらも、それを止める術は見つけられずにいた。

ヴィパッサナーに出会ってまず救われたのは、その激流を止めるためのヒントをもらえたということだった。
瞑想を始めた途端に心が穏やかになったわけではないが、少なくとも終始ラベリングをし続けていれば、無駄な思考が意識にのぼることはない。

そうこうするうちに言葉でラベリングしなくても向けたい方向へ意識を向けられるようになり、最近は「ゴチャゴチャ考えよう」と決めた時以外はあまり無駄にものを考えなくなった。
なんだかんだ言って頭を使うと疲れてしまうので、考える必要がないときは脳を休ませておいたほうがいい。


そうなってみて改めて思うのは、「思考を止める」「妄想を止める」というのは「何もしない」ということではなく、「思考以外の別のことに意識を向ける」ということなのだな、ということだ。
四六時中今この瞬間の観察をしていれば、過去や未来に心を飛ばしてあれこれ考えることはできなくなる。

最近になって、真空というのは実は何もない空間ではなく、なんらか未知の物質で満たされているらしいことが分かってきているそうだが、人の意識もきっと同じようなものなのだろう。

悩む心は悩みで、怒る心は怒りで満たされているように、今この瞬間を観察し続けることによって妄想の入らない思考で心を満たすのが、「妄想を止める」ということなのかもしれない。